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何日目からだったか、NHKのニュースの合間に子犬や子猫、動物の親子の映像が、数秒間流れることに気づいた。
「かわいい」そう思った瞬間、心の中に水の流れる音が聞こえた。
「心が潤った」と感じたのではない。
「心が乾いていた」ことに、初めて気づいた。
しばらくは、この映像が楽しみだった。
震災の「あの」映像は疲れる。
後に、この動物の映像は、NHKのプロデューサーが意図的に流したものだと聞く。感謝。
TVというメディアは、人のこころに「安らぎ」を呼び起こすことのできる、すごいメディアだ。
単に高視聴率狙いの、意味のないくだらないことばかりに走る、今の社会構造、もうけの構造がくやしい。
儲かることと善良は必ずしも一致しないばかりか、むしろたいていは相反する。

1週間の間に、いろんな方からご連絡を頂いた。
パソコン通信の友人を通じて、伝言メールで連絡をくださった方。
どうやって捜し当てたのかと思うくらい、あちこちに電話して、実家まで探して連絡をくださった方。
殆どの避難所へ電話してくださった方。
とりあえず、はがきを送って下さった方。
20数年ぶりで声を聞いた友人。
人の気持ちは、人にパワーをくれる。
ありがとう。

会社は気が紛れる。
もとい、人に会うと気が紛れる。
お弁当・水筒持参。雪の降る日も、雨の降る日もトイレは1Fから25Fまでの全員が、1階外にある仮設トイレを使用。
出社初日。5時半には家を出る。帰りも道が混んでいるので、3時に会社を出る。家に帰り着いたのは9時半。
こんな日々では、復旧する前に倒れる。
規則に会わせた生活ではなく、人間に会わせた生活を見直すときだと感じる。

出社しはじめて、数日後、ふと、自分の精神状態が普通でないことに気づく。
きっかけはわからない。が、ふと「普通じゃない」と感じた。
とにかく、気持ちが前に向かない。
どうしようもなく、すべてが八方塞がりに感じる。
性格上、表面をとりつくろっている分、タチが悪い。
「何が」ではないが、尋常ではない。ことに気づく。
とりあえず、神戸から離れる。
時間を作って、いつも行くハーブのお店になんとしてでも行き、 3種類のオイルを手に入れる。
通勤時のマスクに毎日3種類のオイルをつけ、できるだけ深呼吸を心掛ける。
一月経った頃。
自分の気持ちが変わって来た事に気づいた。
3ヵ月は続けよう。
眠るときにも、オイルは使った。

わたしの場合、とにかく鈍感なのか、まぬけなのか、本当の自分の気持ちや、体の様子に気づかない。
自覚しないまま、ものすごい恐怖を心の底へ底へとしまいこんでいる。
からだがへとへとに疲れていることにさえ、「疲れている」と神経は教えてくれなくなっていた。
「私は大丈夫」「がんばらなくっちゃ」と、自分で自分をごまかして走っていた。
私は「恐かった」んだなと気づいたのは、どんなに笑われても1ヵ月も2ヵ月も後の事。
名谷についた時の涙や、動物の映像を見たときの水の流れる音は、そんな心の訴えだった。

それにすら気づかないくらい、自分の心を凍らせていた。

自分の持つ五感の大事さを改めて感じた。

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